捜索者・改
映画のなかで元俳優ふたりの映画談義が延々続くらしい、と事前に聞いてちょっと『トロピック・サンダー』を連想した。アレックス・コックスは、観てない作品もあるけれど好きな監督だ。で、観てみた。
ネタは西部劇が多いと聞いていて、西部劇をあまり観てない(タイトルの元ネタ『捜索者』さえ観てない…たぶん)僕はいささか不安だったんだけれども…別に問題なかったよ。ネタは西部劇だけというわけでもないし、役者や監督が誰だったかとかそういうトリビアばっかりで、ネタ映画の内容や意味にはほとんど踏み込まないからだ。しかも、わざと登場人物が間違えまくったりする。『明日に向って撃て!』のヒロインが誰だったかわからなくなるシーンなんて「キャサリン・ロスだろがお前ら!」とフツーに叫びたくなるという、我ながらなんて単純な釣られよう。もちろんコックスはわざとやっていて、西部劇に詳しくなくても映画ファンならば観てて絶対に退屈しない。面白い。
さて、コックス監督なのでこれは露骨に政治的な映画でもあって、911とイラクについてもこまごまとダイレクトに言及される。車のバンパーステッカーには、こう書いてある。「KICK THEIR ASS AND TAKE THEIR GAS」って。こんなステッカー、本当に売られてたんだそうだ。ペンタゴンには映画撮影に兵器を貸し出すかわりに内容を検閲するための専門の部署が存在する、などという僕は最近まじめな学術書『9・11とアメリカ/映画にみる現代社会と文化』(鳳書房)に初めて教えてもらったような事実が、台詞で丁寧に語られたりもする。
なんだけれども…「ナイン・イレブン」を「セブン・イレブン」と間違えるというギャグを笑えるかどうか、がノリの分かれ目だろうか。ごめん。笑えなかったよそこは。そこまで結構笑ってたのに。頭カタくて申し訳ない。そして、ラストを著○権問題という政治的だけれど戦争とはあまり関係ない話にオトしてしまうのには、ちょっとがっかりした。
ある種の映画作家が、ここ数年「映画についての映画」を作ってしまうのは、よくわかる。911を経てイラク侵略を経て、「今まで映画はいったい何をやってたんだろう」と考え込んじゃうひとは、僕的には信用できる映画作家だ。ブライアン・デ・パルマやジョージ・A・ロメロが無人称視点を排除し、「映画の人称への懐疑」を近作に持ち込んでいるのも、同じ文脈だと思う。(ちなみに「POV映画」なる日本語は意味不明で嫌いだ)
そういう意味ではアレックス・コックスは、『トロピック・サンダー』のベン・スティラー同様、信用できる。オフビートに軽く逃げてしまうのはたぶん、彼は最初から反体制・反米・パンクを貫いてきたイギリス人なので、身につまされ度がベン・スティラーより軽いからだろう。「オレは最初からちゃんとやってたからな」というような矜持があるのかも知れない。
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